ハロプロ楽曲大賞2017、私的部門賞はこんなだった

ハロプロ楽曲大賞2017終了。お疲れさまでした。本稿執筆時点では発表イベントはまだ始まってもいないので、予約投稿しておきます。公式の結果発表ページアップとこのページのアップタイミングとが上手く合いますように。各賞のワーストも考えたけど、それは秘密。

ベストプロデュース:邪魔しないで Here We Go!

13期に中学生を入れなかった時点で当然想像されていたとおりの世界観をもった曲がモーニング娘。に投下。1年越しの成果物。
ただし、ダンス表現はなかなか堂に入っているが、私服風衣装や顔のアップではまだまだ子どもっぽさが表に出てしまっている。CDシングル年3枚以上ペース時代なら、ここから「冷淡三部作」なんてのを展開して、表現力の向上具合いを味わっていく楽しみがありそうだが、今どきは難しそう。


ベストカヴァー:行くZYX! FLY HIGH

この『ありがとう おとももち』自体Disc1は驚くほど出来がいいのだが、1曲選ぶならこれ。
やっぱりアルバム1枚まるまるソロでレコーディングすると、ダブリングを試してみたり、1人多重ハモリやったり、普段あまり使わない音域で歌ってみたり、様々なトライができるものだよなあ。それが、(オケが古いままなこともあって)ともするとノスタルジーに終わってしまいかねないセルフカヴァーに、ささやかな新鮮味をもたらしている。歌詞の解釈力なども段違いに上がっているしね。


ベストリメイク:モーニングみそ汁

8ビートの拍頭を強調したリズム隊プログラミングとスッキリしたミックスにより実にモダンなサウンドに仕上がった。オリジナルとは較べものにならないほど厳密に制御されたユニゾンヴォーカルのおかげもあってとってもリズミカル。地味ながらナイスリメイク。


ベストタイトル:キレイ・カワイ・ミライ

形容動詞・形容詞・名詞を強引に連結するというタイトルだが、それで価値観と雰囲気を伝えられているんだからこれで十分じゃないかと。「Rich・Young・Girly・細い」ほどの話題にはならなかったみたいだけど。


ベストリリック:闇に抜け駆け

忍者モチーフの単語を散りばめつつ、JKが何かを争っているっぽいということ《だけ》が解るように、否、それ《しか》解らないように周到に言葉を埋めた慎重さの勝利。だからこの曲は舞台や映画を観ていない層にも堂々と披露できる出来になった。「マキビシ」と「まぁ厳しい」を掛けたくだらない駄洒落を、ちゃんと聞こえるように歌うことがいつでもできる和田桜子の安定力も重要なポイント。

次点は吉川友「アンバランス アンバランス」。

ベストリリシスト:星部ショウ

「エエジャナイカ ニンジャナイカ」は技巧が板についてきていて頼もしかったし、「BRAND NEW MORNING」ではいよいよアーティスト性が滲み出てきた。職業作詞家という技能職としても、自作他演のアーティストとしても、一段ステージを上った感あり。恐らく去年『辛夷其ノ壱』を作った経験が大きいのだろう。ちなみにベストフレーズは「大事な場面だぜ 普段どおりいくぞ」(「シャララ!やれるはずさ」)。

ベストメロディ:若いんだし!

イントロ一聴、“わお!ハロプロでトロピカルハウスか!”といきり立ちそうになるが、いざ歌を聴き進めると、この曲はハウスにあるまじき強シャッフルビートであることが解るし、トロピカルハウス要素はあくまで意匠であって、この曲の要はサビ後半の上昇感浮遊感、そしてその上で音階を自由自在に飛び回るメロディラインだ、といえる。メロディメーカー・つんく♂はいよいよ完熟の度を極めつつある。


ベストコライト:fun fun fun

ヒットメーカー・Carlos K.とPINK CRES.の実質的ディレクター・MEROAの共作。キャッチーなことこの上ないメインモチーフは恐らくCarlos K.によるものと思われるが、ベースサウンドとギターでコード感を与えた後はなるべく音数を絞り、MEROAの歌詞がそのまま歌メロの枝葉部分としてカラフルに跳ね回るようにしてある。MEROAが、自分がどれくらい言葉数の多い歌詞を書くタイプかをスタイルとして解っていて、それをPINK CRES.の3人の声質でどれくらい重ねさせればどれくらい華やかになるか、だから編曲者にはどこまで以上は音を埋めさせなくてよいか、が最初からみえているからできる、実にスマートなワーク。


ベストコンポーザー:津野米咲

「笑って」「夢」ともにポップスのツボを押さえた素晴らしいメロディ展開を惜しみなく繰り出す。この人、あと10年の内には椎名林檎みたいにエスタブリッシュメントに認められるミュージシャンになってるだろうし、後年は昭和歌謡の大家と並び称される存在になってるかもしれないよ。

ベストアレンジ:初恋サンライズ

アプカミ#55のヴォーカルレコーディング映像で明らかになっているとおり、この曲の初期アレンジは実はディストーションギターがリードを取るもので、完パケ版ではそれがギラギラしたシンセリードに差し替えられた。それが曲の人工的透明度を高めることに成功したのは、MVの画調が青白いトーンで統一されているのを見ると、MV制作班にもストレートに伝わったのだなと判る。


ベストアレンジャー:大久保薫

「Fiesta! Fiesta!」に顕著だが、今年は妙にサービス精神旺盛なアレンジが多くて面白かった。

ベストインストゥルメンタル:Good Boy Bad Girl

たぶんオケができた時点ではアレンジャー / ディレクター的にはそうとうの自信作だったと思うのだが、歌が入ったことによって何故か緊張感が失われてしまった。作曲の星部ショウも作詞の児玉雨子も、そして歌唱したカントリー・ガールズも、誰も決して悪い仕事はしていないのだが…。こういう、オケの時点で完成してしまい、それ以上さわると逆効果しか生まない曲、というのも音楽にはあるのだなぁと思い知らされる。げに楽曲作りというのは一筋縄でゆかぬものなり。

ベストプレイ:魔女っ子メグちゃん - 高尾俊行

今年は瞠目すべき楽器プレイというのはそれほど多くなかった気がするが、そんななかではこのドラム。ヴォーカルのバランスをもうちょっと下げるとか、ドラムを思い切ってモノラルにしちゃうとか、歪ませちゃうとか、してもよかったのかもしれないけど。

ベストコーラス:ジェラシー ジェラシー - 小田さくら

メインヴォーカルを張っているメンバーがバックコーラスを一手に引き受けていてもちっとも褒められない、というのは鞘師里保でもよくあったことだが、この曲がAメロからグッと耳をつかむのは彼女のコーラスの効果が大きいと思うぞ。

ベストユニゾンヴォーカル:地団駄ダンス

サビ後半、片手逆回しシーンのユニゾンが気持ちいい。個人的好みでは転調後のラスサビ「嘆いてばっかじゃない」「帳尻が合わない」が特にBEST MATCH!(小林克也)。


ベストソロヴォーカル:ピーナッツバタージェリーラブ - 梁川奈々美

この曲は素晴らしいソロパートの宝庫だが、白眉は何といっても「とろけちゃうよ」。梁川奈々美のビロード声を文句なく活かすパートが遂に現れた。小関舞の「パワーチャージ」「枕の下に隠れる」も甲乙つけがたい。

次点で「おバカねこと おバカねこバカのうた」金澤朋子。



ベストラップ:Fiesta! Fiesta! - エリック・フクサキ

前半のはラップじゃなくてフェイク素材をアレンジャーが切り貼りしたものだが、間奏で立派なラップを聴かせてくれた。普段の歌やトークでは聞けないだみ声も新鮮。

ベストミキシング:BRAND NEW MORNING

インストゥルメンタルVer.を聴くとまったくつまらない出来なのに、歌が入るとヴォーカルユニゾンのシンセリフがグンと迫力を増す、というのはつまり、それだけ最終ミックスが成功しているということだろう。


ベストコスチューム:ぶっぱなせ!Baby, I Love Ya!

オフショル衣装の色分けが、田中れいな:赤、岡田万里奈&宮澤茉凜が黄。ここにこのユニットの最新のイニシアチヴ構造が表れている。何となくでこの色分けならワーストコスチュームかもしれないが、SHOWROOMでの田中れいなの発言をちゃんと聞いていれば、現状のLoVendoЯは、田中リーダーがお仕着せのバンド期間を経て、真に自分のやりたいことと向き合った結果、こういう方向にあるということが判る。つまりやりたいことはバンドなんかでは100%なかった、ということなのだが、だからこそ今は確信的リーダーシップを田中れいなは発揮しているといえ、それはLoVendoЯにとって悪いことではないはずだ。もちろん、構成員である岡田万里奈と宮澤茉凜にとってはどうなのか、というのは別であるわけだが、彼女達は--特に岡田万里奈は持ち前の賢さで--その現実とタフに折り合いをつけていってくれそうで、だからこの衣装色分けも、期待込みでベストコスチュームに選びたいのである。


ベストコレオグラフ:誤爆~We Can't Go Back~

去年の「KEEP ON 上昇志向!!」に続くMJオマージュ。第二弾なだけあってずいぶん判りやすくなったというか直截になったというか。

次点は「VIVA!!薔薇色の人生」の間奏手遊び。



ベストダンス:The Curtain Rises

今年はどうにも不作だったように思うが、そんななかベテランの安定技で魅せてくれたこの曲に。


ベストジャケット:愛さえあればなんにもいらない / ナミダイロノケツイ / 魔女っ子メグちゃん - 初回生産限定盤SP

今年はジャケは豊作だった。「ピーナッツバタージェリーラブ」通常盤Bおよび初回生産限定盤B、「初恋サンライズ」通常盤A、「就活センセーション」通常盤Aなど。物議を醸した「BRAND NEW MORNING」初回生産限定盤Aも、人を食ったユーモアでよかったと思う。







ブライテストホープ:段原瑠々

「Fiesta! Fiesta!」には何の食指も動かなかったが、「誤爆」の歌い出しの節回しは実に見事だった。菅井先生に矯正されることで、《声を響かせる楽器》としては早々に進化してしまうのだろうが、この、《極めて精確な位置に自らの声を配置できるプログラマティック・シーケンサー》としての技能発揮ももうしばらくみていたかったけどなあ。

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